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民事訴訟法368条(少額訴訟の要件等)

【解説】

1.少額訴訟とは

一般的に裁判というのは、費用も時間もかかるので大変ですが、少額訴訟というのは、60万円以下の金銭債権について、簡易・迅速に判決を得る仕組みを定めたものです。

そして、確定した少額訴訟の判決(判決書には「少額訴訟判決」と表示されます)及び仮執行宣言の付された少額訴訟判決は執行力のある債務名義となります。そして、簡易・迅速な執行が求められるので、当事者の地位の承継があった場合を除き、執行文の付与なしに強制執行の申立てができます(民事執行法25条但書)。

2.少額訴訟の要件(第1項)

①管轄

少額訴訟は、簡易裁判所でしか提起することはできません。

②訴訟の目的

少額訴訟は、訴訟の目的の価額が「60万円」以下の「金銭」の支払の請求を目的とする訴えについてのみ提起することができます。

この「金銭」の支払の請求を目的とするという点については、その発生原因は特に問われていません。

また、訴訟の目的の価額である60万円という制限については、利息、遅延損害金はこの60万円の訴額には算入されません(第9条2項)。

③利用回数(第1項但書)

少額訴訟は、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができないとされていますが、具体的にはその回数は「10回」とされています(民事訴訟規則223条)。

このような利用回数の制限があるので、少額訴訟を求める申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない(第3項)とされています。この届出について虚偽の届出をした場合は、10万円以下の過料に処せられます(第381条)。

この利用回数の制限があるのは、特定の当事者が反復継続的かつ独占的にこの制度を利用すると、市民間の紛争を解決するという少額訴訟制度の趣旨に反することになるので、利用者に機会の平等を保障しようという趣旨です。

3.当事者の申立(第2項)

少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならないとされていますので、原告は訴え提起の段階で簡易裁判所の通常訴訟か少額訴訟かを選択する必要があります。このように、少額訴訟によるかどうかは、原告にまかされているので、裁判所が職権で少額訴訟を開始することはありません。

ただ、原告が少額訴訟による審理及び裁判を求めても、被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができるので(第373条1項)、原告及び被告が少額訴訟によることを望まなければ少額訴訟は開始されないことになります。

また、原告が少額訴訟を求めても、一定の場合には裁判所は職権で通常訴訟に移行させることができます(第373条3項)。