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民法579条(買戻しの特約)

【解説】

1.買戻しとは

この買戻しというのは、一旦売買で売主から買主へ移転した不動産を、再び売主の元に戻すものです。つまり、不動産の所有権が、売主→買主→売主と移動するわけです。

どうしてこんな面倒なことをするのでしょうか。これは、お金を借りる手段だと考えて下さい。不動産が、売主→買主→売主と移動するということは、逆にいえばお金は、買主→売主→買主と動きますよね。

つまり最初の売買で、売主は不動産を手放す代わりに、売買代金を取得することができます。そして、売主が買主から不動産を取り戻すときには、代金を支払わないといけません。

これは、お金を借りて、返すのと同じになります。つまり、資金調達の一手段というわけです。

2.買戻しの目的物

民法上の買戻しの制度は、その目的物は「不動産」に限られます。

3.買戻し特約の時期

この買戻しをするには、売買契約のときに買戻し特約というのを結んでおきます。

この買戻し特約は、売買契約と同時でなければいけません。

4.買戻しの金額

買戻しは「買主が支払った代金及び契約の費用を返還して」行います。

最初に買戻しは、お金を借りるのと同じだといいました。お金を借りるときは、通常利息というものを払いますが、買戻しにおいて利息は特約がなければ支払う必要はありません。

というのは、本条にも規定がある通り、「不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみな」されるからです。

5.買戻しの方法

民法上の買戻しの制度は、一旦売却した不動産を再度売買によって買戻すという方法は使いません。

「売買の解除」という方法で買戻します。

A→B→Aという買戻しの場合、最初のA→Bは売買契約ですが、B→Aは最初の売買契約の解除という手段を使うわけです。B→Aへ再度売買契約を締結するわけではありません。

B→Aへもう一度売買契約を締結するという方法も使えますが、それは民法上の「買戻し」ではなく、「再売買の予約」というものになります。この再売買の予約も、契約自由の原則に基づいて認められますが、民法上の「買戻し」ではないということですね。