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第150条(催告による時効の完成猶予)


【改正法】
(催告による時効の完成猶予)
第150条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
【旧法】
(催告)
第153条 催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事事件手続法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

1.時効の完成猶予(第1項)

本条は、旧法からある催告の規定と同趣旨の規定です。旧法においては、催告は6箇月以内に裁判上の請求等をしないと時効の中断の効力を生じないとされており、催告はとりあえず時効の完成を猶予するものであり、時効期間の進行を止めてリセットする効果まではありませんでした。

したがって、改正法においても、催告があったとしても、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しないとしており、時効の更新の効果までは認めていません。

なお、本条については、旧法では「催告は、6箇月以内に、裁判上の請求等をしなければ、時効の中断の効力を生じない。」となっており、改正法では、「催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」となっています。

この条文を字面だけ見て、旧法では「6箇月以内の裁判上の請求等」が催告の効力を発生させる要件で、改正法では催告の効力が発生するのに「6箇月以内の裁判上の請求等」が不要になったと考えないで下さい。

旧法では、催告から「6箇月以内の裁判上の請求等」がなければ時効の中断の効力が生じないと規定しているので、結局「6箇月以内の裁判上の請求等」があれば、権利は時効消滅しません。

改正法では、催告から6箇月間は時効は完成しないので、「6箇月以内の裁判上の請求等」があれば、権利は時効消滅しないので、同じ意味です。

上記の図を見ながらも、もう一度新旧の条文を見て下さい。旧法の条文は、「催告は、6箇月以内に、裁判上の請求等をしなければ、時効の中断(時効の完成猶予)の効力を生じない。」となります。したがって、6箇月以内に、裁判上の請求等をすれば、裁判上の請求等の時期が「本来の時効期間の満了後」であっても、時効は完成しません。しかし、6箇月以内に、裁判上の請求等をしなければ、本来の時効期間の満了時に権利は時効消滅します。

それに対して、新法の条文は、「催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」となっています。したがって、催告があれば6箇月間は時効の完成は猶予されるので、その間に裁判上の請求等をすれば、裁判上の請求等の時期が、本来の時効期間の満了後であっても、時効は完成しません。しかし、6箇月以内に、裁判上の請求等をしなければ、権利は時効消滅します。

いずれにしても、新旧いずれの条文でも、催告があれば「無条件に」時効の完成は猶予され、6箇月以内に裁判上の請求等をしたときだけ、権利は時効消滅せずにすみます。

2.時効の完成猶予期間中の再度の催告(第2項)

そして、旧法の下での判例(大判大8年6月30日)を踏まえて、催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、時効の完成猶予の効力を有しないと規定しました。6箇月以内に何度催告を繰り返してもダメです。なお、協議を行う旨の合意によって時効の完成が猶予されている間になされた催告も、同様に時効の完成を猶予する効力はありません(第151条3項)。