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第400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)


【改正法】
(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第400条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
【旧法】
(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第400条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、特定物の引渡しの場合について、善管注意義務を規定していますが、改正法ではこの善管注意義務の内容をより明確にする文言が追加されています。「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる」という部分です。

これは、旧法の条文だけ見ていると、特定物の引渡債務は、その債務の発生原因にかかわらず、客観的かつ一律に善管注意義務の内容や程度が定まるようにも読めます。しかし、善管注意義務の内容は、個々の取引関係における個別の事情を勘案して定まるものであり、改正法で追加されたような事情を考慮する必要があります。

その内容として、まず、この善管注意義務については、「契約その他の債権の発生原因」により定まるものとされています。債権の発生原因は、契約に基づくものに限らず不当利得のように契約以外のものにより発生することもあるので、「契約その他」の債権の発生原因に基づいて定まります。それだけではなく、従来からも言われていたように「取引上の社会通念」からもその内容が定まります。

なお、本条については、第483条と関連しています。第483条は、特定物について、弁済者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡せば済むと規定しているので、引き渡すまでの目的物の保管については、債務者に善管注意義務を課すことによってバランスを取っています。そして、この両方の規定について、削除するという意見もあったようですが、善管注意義務の内容を明確にした上で、そのまま残りました。