※この記事は一般的な条文解説で、宅建等の資格試験の範囲を超えた内容も含みます。当サイトの記事が読みやすいと感じた方は、当サイトと資格試験向け教材の関係をご覧下さい。

第423条の5(債務者の取立てその他の処分の権限等)


【改正法】(新設)
(債務者の取立てその他の処分の権限等)
第423条の5 債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。
【旧法】
なし

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、債権者代位権が行使された場合の債務者の処分についての規定です。

判例(大判昭14年5月16日)によれば、代位債権者が債権者代位権の行使に着手した場合において、債務者が、代位債権者の権利行使について通知を受けるか、又は代位債権者の権利行使を了知したときは、もはや債務者独自の訴えの提起はできず、また権利の処分もできないとされています。また、下級審の判例ではありますが、債務者の処分が制限されることを前提に、相手方は債務者に対して債務の履行をすることができないとするものもありました。これは、意外に強い効果です。

債権が仮に差し押さえられたとしても、債務者は第三債務者に対して訴訟を提起して無条件の給付判決を受けることができます。これに対して、債権者代位権の場合には、裁判外の通知や債務者の了知によって債務者の処分権限が制限され、債務者が第三債務者に対して裁判をすることもできなくなります。現在の判例では、債権者代位権の方が債権執行よりかえって強い効果が与えられていることになります。

しかし、そもそも債権者代位権は、債務者が自ら権利行使しない場合に、債権者が代わりに権利行使して債務者の責任財産を保全するための制度です。したがって、仮に債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者自身が権利行使して責任財産が保全されるのであれば、当初の目的を達成することができます。それにもかかわらず、債務者自身の権利行使を禁ずるのは、他人の財産管理に対する不当な干渉といえます。

また、債務者の処分が制限されることを前提に、相手方は債務者に対して債務の履行をすることができないというのであれば、相手方は履行するに当たって、債権者代位権の要件を満たしているかどうかを判断しなければならないことになります。これは相手方がその判断に必要な情報を有しているとも限らないので、相手方に酷であるといえます。

そこで、改正法では債権者代位権が行使されても、債務者は、被代位権利について、自ら取立て等の処分をすることもでき、また、第三債務者も被代位権利について債務者に対して履行することもできるように規定しました。