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第424条の6(財産の返還又は価額の償還の請求)


【改正法】(新設)
(新設)第2目 詐害行為取消権の行使の方法等
(財産の返還又は価額の償還の請求)
第424条の6 債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。

2 債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
【旧法】
なし

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

第424条の6(財産の返還又は価額の償還の請求)

本条は、詐害行為取消権の行使によって受益者に移転した財産の返還に関する規定です。

この点について、判例は、詐害行為取消権は、債務者の詐害行為を取り消し、かつ、これを根拠として逸出した財産の取戻しを請求する制度だと捉えています。そして、取消しの効果は、取消債権者と受益者・転得者との間で相対的に生じ債務者には及ばないとされる一方、逸出財産については債務者に返還させることを原則としています(折衷説)。したがって、逸出財産が不動産である場合には登記名義は受益者・転得者から債務者に戻り、その後その不動産に対して取消債権者その他の債権者が強制執行をすることになります(逸出財産が金銭又は動産である場合は424条の9参照)。

この判例の考え方については、批判があります。そもそも取消しの効果が債務者に及ばないのであれば、逸出財産を債務者に返還させるというのもおかしいし、その返還された不動産に対して債務者の責任財産として強制執行が可能となるのもおかしい、ということになります。

そこで、改正法は、債権者取消権の債務者の責任財産を保全するという制度趣旨から考えて、逸出財産を債務者の下に回復することを基本としています(第1項前段、第2項前段)。そして、取消債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならないとし(424条の7)、債務者に訴訟に参加する道を作った上で、詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者に対してもその効力を有するとしています(425条)。

この逸出財産の返還方法について、判例も現物返還を原則としていますが、それが不可能又は著しく困難である場合に価格賠償を認めています。改正法も同様に、財産の返還が困難であるときは、取消債権者に価額の償還を請求することができると規定しました(第1項後段、第2項後段)。

なお、改正法の本条第1項と第2項は、第1項で受益者について、第2項で転得者について規定し、それぞれに現物返還の原則→それが困難なときは価額償還、というふうに規定しています。