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旧第437条(連帯債務者の一人に対する免除)


【改正法】
削除

【参照条文】
(連帯債務者の一人との間の免除等と求償権)
第445条 連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第442条第1項の求償権を行使することができる。
【旧法】
(連帯債務者の一人に対する免除)
第437条 連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

この部分は、旧法の第437条(連帯債務者の一人に対する免除)の規定の削除になります。改正法では、連帯債務の絶対的効力事由がいくつか削減されていますが、この部分もその一つです。

旧法では、連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ絶対的効力事由とされ、他の連帯債務者にも効力が生じます。ということは、連帯債務の一人に対して債務を免除すると、債権者が他の連帯債務者に対して請求するときに、その額が減少することになります。しかし、それは債権者の通常の意思に反するおそれがあります。この債権者の「通常の意思」というのは、考え方はいろいろあるかとは思いますが、免除というのは「あなたは支払わなくていいですよ」ということでしょう。他の連帯債務者に対してまで免除の効果を生じさせるということではないと思われます。ということは、連帯債務者の一人に対する免除の効果は、相対的ということになります。もし、負担部分についての絶対的効力を生じさせたければ、他の連帯債務者との関係で債権者がその旨の免除をすればよいでしょう(第441条参照)。

そこで、旧法の第437条が削除されましたので、連帯債務者の一人に対して債務を免除しても、他の連帯債務者に対して効力が生じず、免除をしていない他の連帯債務者に対して全額の請求をすることができます。

なお、改正法の第437条は「連帯債務者の一人についての法律行為の無効等」の規定に変わっており、この条文は旧法の第433条(連帯債務者の一人についての法律行為の無効等)の規定と全く同一です。