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第472条の4(免責的債務引受による担保の移転)


【改正法】(新設)
(免責的債務引受による担保の移転)
第472条の4 債権者は、第472条第1項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。

2 前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。

3 前2項の規定は、第472条第1項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。

4 前項の場合において、同項において準用する第1項の承諾は、書面でしなければ、その効力を生じない。

5 前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その承諾は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
【旧法】
なし

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、免責的債務引受の効果として、原債務に設定された担保が引受人に移転するかどうかに関する規定です。免責的債務引受がなされると、債務者が変更され、物上保証人や保証人の責任に影響を与える可能性があります。

まず、債務者が設定した担保権については、争いがあるようなので、明文規定を設けてルールの明確化を図る必要があるということで規定が設けられました。具体的には、「債権者」は、債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができます(第1項本文)。これについては、債務者の承諾は要求されていません。もともと債務者は、原債務のために担保権を設定していたわけですから、この担保権の存続を認めても担保権設定者である債務者に新たな不利益を課すものではないからです。このように担保権の存続を認めますと、債務者は、もともと自分の設定した担保権であったものが、引受人の債務のための担保権になるので、いわば物上保証人のような立場になります。

次に、債務者以外の第三者が設定した担保権については、免責的債務引受が行われても、物上保証人の同意がない限り、引受人の債務を担保するものとはならず消滅するとされています(質権について最判昭46年3月18日)。これについては、学説上も特に異論はないようです。物上保証人は債務者が誰かについて利害があるからです。改正法においては、引受人以外の者が担保権を設定した場合には、その承諾を得なければならないとして、承諾がなければ移転しない旨を規定しています(第1項但書)。

そして、担保権が移転するには、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならないとしています(第2項)。

これらは、担保権以外の保証についても同様です(第3項)。ただ、保証契約は書面によってしなければならないとされているので、保証人の承諾は書面によってしなければ効力がありません(第4項)。書面以外の電磁的記録によって承諾をしてもかまいません(第5項)。