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第474条(第三者の弁済)


【改正法】
(第三者の弁済)
第474条 債務の弁済は、第三者もすることができる。

弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。

3(新設) 前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。

4(新設) 前3項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。
【旧法】
(第三者の弁済)
第474条 債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。

利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

1.第1項及び第4項

改正法第1項は、第三者の弁済を認める規定で、これは、旧法第1項本文と全く同じです。

そして、改正法第1項には、旧法第1項の但書に該当する部分が削除されていますが、この部分は改正法第4項に同趣旨の条文が新設の形で規定されています。

2.第2項

改正法第2項は、弁済について正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済できない旨を規定しています。

ここは、まず表現の問題があります。旧法第2項では「利害関係を有しない第三者」といい、改正法第2項では「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」となっています。この「利害関係」という表現と、「正当な利益」という表現は、旧法では両方が用いられていて、旧法第2項の第三者による弁済が認められる「利害関係」を有する第三者と、弁済によって当然に債権者に代位すること(法定代位)が認められる「正当な利益を有する者」(500条)との関係が必ずしも明らかではなく、「どう違うの?」と疑問がありました。

そこで、改正法では「利害関係」ではなく、「正当な利益」という表現に直して、統一しています。

次に内容面ですが、旧法の規定については、弁済について正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済できませんが、債務者の意思に反しているかどうかは、債権者には分からないことがあるため、債権者が弁済を受けた後に弁済が無効となるおそれがあります。そうなると、債権者は受領した給付物を返還しなければならないことになり不利益を受けます。

そこで、改正法は、正当な利益を有しない第三者が、債務者の意思に反して弁済することはできず、弁済すればその弁済は無効となりますが、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この弁済は有効としました。

3.第3項

次の問題点として、第三者の弁済を認めている以上、債権者が、自分の知らない第三者から弁済をする旨の申し出があった場合に、それを拒絶することはできないことになります。このような債権者の立場を考慮すると、正当な利益を有しない第三者の弁済について、債権者の意思的関与を認めるのが妥当です。

そこで、弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができないことにしました。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合、そのことを債権者が知っていれば、その第三者は弁済することができます。

第474条(第三者の弁済)