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第566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)


【改正法】
(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第566条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
【旧法】
第570条による第566条の準用

第566条3項 契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、担保責任の期間の制限を定めた規定ですが、「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的『物』」という表現で分かりますように、この期間制限があるのは、「物」の契約不適合の場合です。

その期間は、「買主がその不適合を知った時から1年」です。そして、期間が制限されているのは、追完請求・代金減額請求・損害賠償・解除の権利行使そのものではなく、「通知」です。つまり、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に「通知」することが要求されています。

今回の改正で瑕疵担保責任を債務不履行の一般原則に一元化しましたが(562条参照)、その考え方からは、期間制限の点も債権の消滅時効の一般原則を適用する(権利行使できることを知った時から5年、権利行使可能時から10年)ということも考えられます。

旧法においては、「契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない」としており、解除・損害賠償(旧法では追完請求と代金減額請求は認められていない)という権利行使自体を契約不適合を知った時から1年以内に行使しなければなりませんでした。

この「権利行使」というのは、判例によれば、「裁判上の権利行使をする必要はないが、少なくとも売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある。」としていました。これは、目的物が受領された場合に売主は履行を終えたという期待を持つのが普通であることから、この売主の期待を保護するためだとされていました。

しかし、1年以内にこのような権利行使を買主に要求することは、買主の負担が重すぎるのではないかという疑問があります。

このように債権の消滅時効の一般原則だけでなく、売主の期待の保護や、買主の保護の観点も加味し、上記のように「買主がその不適合を知った時から1年以内」の「通知」と規定されました。

なお、この「通知」というのは、具体的には、契約の不適合の種類やおおよその範囲を通知することが想定されています。

ただ、この通知期間の制限も、売主に故意又は重過失があったときには、適用されません。

最後に、この期間制限は消滅時効に関する規定の適用を排除するものではありません。