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第589条(利息)


【改正法】(新設)
(利息)
第589条 貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。

2 前項の特約があるときは、貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。
【旧法】
なし

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

1.利息(第1項)

本条は、旧法では正面から規定がなかった消費貸借の利息に関する規定を新設しました。

消費貸借に関する利息については、旧法590条1項の貸主の担保責任の規定で、利息付きの消費貸借における担保責任について触れられていますが、それ以外に規定はありません。

この消費貸借は、無利息のものもあれば、利息付きのものもありますが、現実にはほとんどの消費貸借が利息付きであることから、利息の発生をめぐる法律関係を明確にするために、消費貸借は原則として無利息であり、利息を支払うべき旨の特約がある場合に限って借主は利息の支払義務を負うことを条文上明記したのが本条になります(第1項)。

2.利息の発生時期(第2項)

次に、利息を支払うべき特約がある場合に、いつから利息が発生するのかという問題があります。消費貸借が要物契約である場合(587条)には、金銭等の交付があったときから利息が発生するということで問題はないと思います。しかし、改正法により書面でする消費貸借において諾成的消費貸借契約というのが認められましたが(587条の2)、この場合に契約は締結したけれども、また金銭等を交付していない段階で利息が発生するのか、というのが問題になります。

この点については、借主は金銭等の引渡しがないと金利は発生しないと考えるのが通常だと思われますので、「貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる」というふうに、引渡し前の利息の発生は認めていません。