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第598条(使用貸借の解除)


【改正法】
(使用貸借の解除)
第598条 貸主は、前条第2項に規定する場合(当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合)において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。

2 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。

3 借主は、いつでも契約の解除をすることができる。
【旧法】
(借用物の返還の時期)
第597条
→第1項は改正法597条1項へ

当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。(→本文は改正法597条2項へ)ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。

3 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

本条は、前条の続きのような条文です。旧法の597条(借用物の返還の時期)を、使用貸借の存続期間(改正法597条)と貸主の解除権(改正法598条)に分けて規定しています。そのうちの後半の貸主の解除権を規定したのが本条です。

前条の597条では、第1項で期間の定めがある場合、第2項で期間の定めがなく、使用及び収益の目的を定めた場合において、借主がその目的に従い使用及び収益を終えたとき、第3項で借主の死亡の場合について規定しています。その共通項は、使用貸借が「終了」しているということです。

しかし、本条の第1項では、当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用収益の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときについて規定しており、これは使用及び収益を「終わる前であっても」という意味です。つまり、まだ使用貸借は継続しています。

さらに、本条第2項は、使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかった場合の規定ですから、まだ使用貸借は継続しています。

そして、このような継続している使用貸借については、貸主に解除権を認めるというのが本条です。このような観点から、597条と本条を整理したのが、改正法ということになります。

なお、改正法では、借主に、いつでも契約を解除することを認める規定も定めています。