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第616条の2(賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了)


【改正法】(新設)
(賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了)
第616条の2 賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。
【旧法】
なし

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

旧法では、賃借物の一部滅失の場合については、賃料の減額請求ができる旨の規定を置いていましたが(611条)、賃借物の全部滅失については規定がありませんでした。

そこで、賃借物が当事者双方の責に期することができない事由より全部滅失した場合は、賃貸人の債務は履行不能により消滅し、危険負担の債務者主義(旧法536条1項)により、賃借人の賃料債務も消滅します。

次に、賃借人(債権者)の責めに帰すべき事由で賃借物が全部滅失した場合は、賃借人は損害賠償債務を負担した上で、さらに賃料債務も負担するように考えられます(536条2項)。

さらに、賃貸人(債務者)の責めに帰すべき事由により賃借物が全部滅失した場合は、賃貸人は債務不履行の責任を負い、賃貸人の債務は損害賠償債務(填補賠償)として存続し、賃借人が契約の解除をするまでは、賃貸借関係が継続し、賃料債務が発生し続けるようにも考えられます。

しかし、賃借物が全部滅失しているにもかかわらず、賃料債務が存続し続けるのは合理性がなく、この場合の法律関係の明確化を図るために本条が新設され、簡潔に賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借が終了する旨を規定しました。