建替え円滑化法60条(区分所有権及び敷地利用権等)

第60条 権利変換計画においては、第56条第1項の申出をした者を除き、施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者に対しては、施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権が与えられるように定めなければならない。組合の定款により施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権が与えられるように定められた参加組合員に対しても、同様とする。

2 前項前段に規定する者に対して与えられる施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権は、それらの者が有する施行マンションの専有部分の位置、床面積、環境、利用状況等又はその敷地利用権の地積若しくはその割合等とそれらの者に与えられる施行再建マンションの専有部分の位置、床面積、環境等又はその敷地利用権の地積若しくはその割合等を総合的に勘案して、それらの者の相互間の衡平を害しないように定めなければならない。

3 権利変換計画においては、第1項の規定により与えられるように定められるもの以外の施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権並びに保留敷地(第58条1項14号参照)の所有権又は借地権は、施行者に帰属するように定めなければならない。

4 権利変換計画においては、第56条第3項の申出をした者を除き、施行マンションの区分所有者から当該施行マンションについて賃借権の設定を受けている者(その者が更に賃借権を設定しているときは、その賃借権の設定を受けている者)又は施行マンションについて配偶者居住権を有する者から賃借権の設定を受けている者に対しては、第1項の規定によりそれぞれ当該施行マンションの区分所有者に与えられることとなる施行再建マンションの部分について、賃借権が与えられるように定めなければならない。ただし、施行マンションの区分所有者が同条第1項の申出をしたときは、前項の規定により施行者に帰属することとなる施行再建マンションの部分について、賃借権が与えられるように定めなければならない。

5 権利変換計画においては、第56条第3項の申出をした者を除き、施行マンションについて配偶者居住権の設定を受けている者(その者が賃借権を設定している場合を除く。)に対しては、第1項の規定により当該施行マンションの区分所有者に与えられることとなる施行再建マンションの部分について、配偶者居住権が与えられるように定めなければならない。ただし、施行マンションの区分所有者が同条第1項の申出をしたときは、第3項の規定により施行者に帰属することとなる施行再建マンションの部分について、配偶者居住権が与えられるように定めなければならない。

6 前項の場合においては、権利変換計画は、施行マンションについて配偶者居住権の設定を受けている者に対し与えられることとなる施行再建マンションの部分についての配偶者居住権の存続期間が当該施行マンションの配偶者居住権の存続期間と同一の期間となるように定めなければならない。

【解説】

1.区分所有権又は敷地利用権の帰属

本条は、施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権の帰属について規定されています。

まず、施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者に対しては、全員に施行再建マンションの区分所有権又は敷地利用権が与えられるようにする必要があります(第1項前段)。そして、一般的に権利変換計画の決定基準について第59条において「関係権利者間の利害の衡平に十分の考慮を払って定めなければならない」とされていますが、特に権利変換計画の中でも施行再建マンションの区分所有権等に関する事項はもっとも重要なものですから、この施行マンションの区分所有権等の全員に与えられる施行再建マンションの区分所有権は、特に一定の事項を勘案して、「それらの者の相互間の衡平を害しないように定めなければならない」とされています(第2項)。

次に、組合の定款により施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権が与えられるように定められた参加組合員に対しても、施行再建マンションの区分所有権等が与えられます(第1項後段)。

次に、施行者に区分所有権等が帰属する場合として、上記以外の施行再建マンションの区分所有権及び敷地利用権並びに保留敷地の所有権又は借地権とされています(第3項)。

具体的には、
①権利変換を希望しない旨の申出(第56条1項)がなされた施行マンションの区分所有権等の場合
②組合施行の場合に、組合が第15条の規定に基づいて売渡し請求権を行使した施行マンションの区分所有権等の場合
③保留敷地(施行マンションの敷地であった土地で施行再建マンションの敷地とならない土地)の所有権又は借地権の場合

これらの施行者に帰属する区分所有権等は、原則として公募による譲渡によって処分され、建替事業の事業費に充てられます。

2.借家権の帰属(第4項)

権利変換を希望しない旨の申出をした者を除いて、施行マンションについて借家権を有している者は、当該施行マンションの区分所有者に与えられることとなる施行再建マンションの部分について、借家権が与えられます。

ただ、施行マンションの区分所有者が権利変換を希望しない旨の申出をしたときは、施行者に帰属することとなる施行再建マンションの部分について、借家権が与えられます。