建替え円滑化法70条(敷地に関する権利の変換等)

第70条 権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、施行マンションの敷地利用権は失われ、施行再建マンションの敷地利用権は新たに当該敷地利用権を与えられるべき者が取得する。

2 権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、隣接施行敷地の所有権又は借地権は、失われ、又はその上に施行再建マンションの敷地利用権が設定される。

3 権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、保留敷地に関しては、当該保留敷地についての従前の施行マンションの敷地利用権が所有権であるときはその所有権を、借地権であるときはその借地権を、施行者が取得する。

4 施行マンションの敷地及び隣接施行敷地に関する権利で前3項及び第73条の規定により権利が変換されることのないものは、権利変換期日以後においても、なお従前の土地に存する。この場合において、権利変換期日前において、これらの権利のうち地役権又は地上権の登記に係る権利が存していた敷地利用権が担保権等の登記に係る権利の目的となっていたときは、権利変換期日以後においても、当該地役権又は地上権の登記に係る権利と当該担保権等の登記に係る権利との順位は、変わらないものとする。

【解説】

1.敷地利用権(第1項)

権利変換期日において、施行マンションの敷地利用権は失われ、施行再建マンションの敷地利用権は新たに当該敷地利用権を与えられるべき者が取得することになります(第1項)。本来、施行マンションが取り壊されても、それだけでは従来の敷地利用権はなくならないはずです。しかし、権利変換がなされますと、敷地利用権の内容は根本的に変更されることになります。そこで、一旦施行マンションの敷地利用権は消滅させた上で、施行再建マンションの敷地利用権が新たに発生するものとされました。

2.隣接施行敷地(第2項)

隣接施行敷地というのは、施行マンションの敷地に隣接する土地で、これと合わせて施行再建マンションの敷地とする場合の隣接する土地をいいますが、この隣接施行敷地の所有権又は借地権を施行再建マンションの区分所有者が取得する場合には、隣接施行敷地の所有権又は借地権は、権利変換期日において失われることになります。

この隣接施行敷地の所有権又は借地権を施行再建マンションの区分所有者が取得しない場合には、権利変換期日において、隣接施行敷地の上に施行再建マンションの敷地利用権が設定されることになります(第2項)。

3.保留敷地(第3項)

保留敷地というのは、施行マンションの敷地であった土地で施行再建マンションの敷地とならない土地のことであり、施行マンションの敷地利用権が所有権であるときはその所有権を、借地権であるときはその借地権を、施行者が取得することになります(第3項)。そして、この保留敷地を施行者が原則として公募により譲渡し、譲渡代金を建替事業の資金に充てることになります(第89条)。

4.権利変換されない権利(第4項)

施行マンションの敷地及び隣接施行敷地に関する権利は、すべて権利変換がなされるとは限らず、従前の権利をそのまま残しても施行再建マンションの敷地としての利用に支障がない場合もあります。たとえば、地役権などです。このような権利については、権利変換期日以後においても、なお従前の土地に存することになります(第4項前段)。

そして、地役権や地上権の登記がなされている敷地に担保権も設定されている場合には、地役権等はそのまま従前の土地の上に存する反面、担保権はいったん消滅した上で施行再建マンションの敷地の上に移行されるので、地役権等の登記と担保権の登記との順位については従来どおりと変わらないものとする必要があるため、権利変換期日以後においても、当該地役権又は地上権の登記に係る権利と当該担保権等の登記に係る権利との順位は、変わらないものとされています(第4項後段)