下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

管理業務主任者 過去問解説 令和7年 問2

【動画解説】法律 辻説法

【問 2】 委任契約と寄託契約との異同に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。

1 委任契約は当事者間の合意のみで成立する諾成契約であるが、寄託契約は寄託物の引渡しを伴う要物契約である。

2 受任者も受寄者も、契約の相手方の許諾(承諾)を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、第三者に当該契約を履行させることはできない。

3 委任契約も寄託契約も、当該契約が有償か否かによって、受任者や受寄者の注意義務の程度が異なる。

4 委任者も寄託者も、やむを得ない事情の有無や書面による契約か否かにかかわらず、相手方の損害を賠償すれば当該契約をいつでも解除することができる。

【解答及び解説】

【問 2】 正解 2

1 不適切。委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを「承諾」することによって、その効力を生ずるもので、諾成契約である。寄託契約は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを「承諾」することによって、その効力を生ずるもので、諾成契約である。寄託契約は要物契約ではない。
*民法643条、657条

2 適切。受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。また、受寄者も、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。
*民法644条の2第1項、658条2項

3 不適切。委任契約の受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負い、これは委任契約が有償か無償かで区別していない。これに対して、無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負うとされている。有償の受寄者については、善管注意義務が課されている(民法400条)。
*民法644条、659条

4 不適切。委任契約は、「各当事者」がいつでもその解除をすることができるので、委任者からも、やむを得ない事情の有無や書面による契約か否かにかかわらず、契約を解除することができる(無理由解除)。しかし、やむを得ない事由があったときは、解除の際に相手方の損害を賠償する必要はない。これに対して、寄託契約における寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。したがって、問題文の後半は正しい。
*民法651条、657条の2第1項


【解法のポイント】本問は、本試験ではあまり出題されない寄託契約が関係しているので、困った人が多かったかもしれません。