下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成23年 問16

【動画解説】法律 辻説法

【問 16】 Aは甲マンションの201号室を所有しているが、同マンションでは、管理規約に基づいて、各区分所有者は総会の決議により定められている管理費を支払わなければならないとされている。ところがAは、この管理費を滞納している。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aの子B(40歳)が、滞納分の管理費額を管理組合の事務所に持参してきたので、理事長はこれを受領した。翌日、Aもこれを喜んでいる旨を管理組合に告げてきた。ところが、その後、AとBが仲違いし、Bは、管理組合に対してBが支払った管理費の返還を請求している。このとき、管理組合は返還に応じなくてよい。

2 Aが死亡し、Bが2分の1、C及びDがそれぞれ4分の1の割合で共同相続人となった。このとき、管理組合は、B、C及びDのいずれに対してもAが滞納している管理費の全額の支払を請求することができる。

3 Aは201号室を購入するにあたり、E銀行から融資を受け、同室にはE銀行のために抵当権が設定されその旨登記された。Aが融資金の返済を遅滞したため、E銀行はその抵当権に基づいて同室の競売手続をとった。この手続において、管理組合は滞納管理費分の金額について抵当権者に優先して配当を受けることができる。

4 管理組合は、1年前にAに支払を催促したが、それ以外には支払の催促等を行っていない。管理組合は、ついにAを相手取って滞納管理費の支払を求める訴えを提起したが、その訴訟において、Aは5年よりも前に発生した管理費債権については、すでに時効により消滅していると主張したが、10年以内に発生した管理費債権については支払請求が認められる。

【解答及び解説】

【問 16】 正解 1

1 正しい。BはAの代理人として滞納分の管理費を支払い、Aもそれを認めているので管理費の弁済は有効である。その後AとBが仲違しいし、管理費の返還を求めてきたとしても、管理組合は返還に応じる必要はない。
*民法99条

2 誤り。各共同相続人は、その「相続分に応じて」被相続人の権利義務を承継する。したがって、B、C及びDは、滞納している管理の支払債務は負うが、それは相続分に応じた範囲である。
*民法899条

3 誤り。滞納管理費については、管理組合は滞納区分所有者の区分所有権の上に先取特権を有するが、この先取特権の優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなされる。そして、共益費用の先取特権は、一般の先取特権として、抵当権には劣後する。
*区分所有法7条2項

4 誤り。管理費は、基本的に5年で時効消滅するので、10年以内に発生した管理費債権についてすべて支払請求が認められることはない。なお、管理組合は1年前に支払いを催促していたが、裁判外の催告は6ヵ月以内に裁判上の請求等をしないと時効の完成猶予の効力はない。
*民法166条1項1号