下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成5年 問7

【問 7】 Aがその所有する土地建物をBに売却する契約をBと締結したが、その後Bが資金計画に支障を来し、Aが履行の提供をしても、Bが残代金の支払いをしないため、Aが契約を解除しようとする場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものどれか。

1 Aは、Bに対し相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBの履行がないときは、その契約を解除し、あわせて損害賠償の請求をすることができる。

2 AがBに対し履行を催告した場合において、その催告期間が不相当に短いときでも、催告の時より起算して客観的に相当の期間を経過して、Bの履行がないときは、Aは、改めて催告しなくても、その契約を解除することができる。

3 Aは、Bに対して契約を解除したときは、その後これを撤回することはできない。

4 AがBに対し相当の期間を定めて履行を催告した際、あわせて「催告期間内に履行がないときは、改めて解除の意思表示をしなくても、契約を解除する」との意思表示をし、かつ、その期間内にBの履行がない場合でも、Aがその契約を解除するには、改めて解除の意思表示をする必要がある。

【解答及び解説】

【問 7】 正解 4

1 正しい。当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。また、解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げないので、契約を解除し、あわせて損害賠償の請求をすることもできる。
*民法541条、545条3項

2 正しい。肢1で述べたように、契約を解除するには、「相当の期間を定めて」催告をしなければならないが、催告に示された期間が不相当に短い場合でも、催告時より客観的に相当の期間を経過して履行がないならば、解除することができる(判例)。
*民法541条

3 正しい。解除の意思表示は、撤回することができない。
*民法540条2項

4 誤り。本肢のような、催告と解除の意思表示をあわせて行うことは認められている(判例)。この場合の解除の意思表示は「催告期間内に履行がない」ことを停止条件とする意思表示である。したがって、Aは改めて解除の意思表示をする必要はない。
*民法541条


【解法のテクニック】肢2についてですが、具体的には、履行に「相当な期間」は1週間なのに、催告には「2日以内に払え」と書いてあり、実際には債務者は1週間経っても払わなかったような場合です。この判例は、本来履行期が到来し、履行しなければならない立場にいる債務者は、1日でもはやく履行しなければならないのであって、催告書に「何日以内に払え」と書いているかというようなことではなく、実際に「相当の期間」内(1週間)に債務者が履行をしないという事実を重く見ている。本問の肢2と肢4の判例は、出題時点では初出題の判例だったと思います。したがって、かなり難しい問題だったのではないかと推測されます。こういうことは、今年の本試験でもあると思います。しかし、出題者は何も考えずにただ知っている判例を出題するというようなことは実際にはないと思われます。知らない(初出題の)判例であっても、「その場(試験会場)で考えれば分かるだろう」という問題を出題します。本問でも、基本的に債務者は、履行期が到来し、しかも催告まで受けているわけです。そういう立場にあるのだから、1日でも早く履行するのが筋です。この状況から考えると、肢2と肢4はどちらが正解か、判例を知らなくても分かるだろう!ということです。ただし、現在では、この肢2と肢4は「知識」として必要ですので、覚えておいて下さい。