下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成6年 問41

【問 41】 宅地建物取引業者がマンション(*区分所有建物)の一室の賃貸借契約を媒介するに際し、重要事項の説明を行った。この場合、次の記述のうち、宅地建物取引業法第35条の規定に違反しないものはどれか。
※本問は法改正により正解が2つあります。

1 マンションの所有者については、登記名義人を説明したが、マンションの抵当権については、借主に関係がないので、説明しなかった。

2 敷金の額については、説明したが、その保管方法については、借主に関係がないので、説明しなかった。

3 マンションの管理費のうち、所有者が負担しなければならない費用の額については、借主が負担するわけではないので、説明しなかった。

4 マンションの管理の委託を受けている者について,その氏名は説明したが、住所については、必要がないので、説明しなかった。

*区分所有建物=建物の区分所有等に関する法律第2条第1項に規定する区分所有権の目的である建物をいう。

【解答及び解説】

【問 41】 正解 2及び3

1 違反する。当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名を説明しなければならない。「登記された権利の種類」の中には、当然抵当権についての説明も含まれる。そもそも、抵当権のついた建物の賃借人は、抵当権者に対抗できないので、建物の借主に抵当権が関係ないというのはおかしい。

【じっくり解説】

これは答えは分かるでしょう。「違反する」というのが正解です。

条文は、宅建業法35条1項1号「当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)」というのが根拠です。

本問は、「マンション」の「賃貸借」の問題ですが、この説明対象である「登記された権利」というのは、マンションであれ、賃貸借であれ、適用されるものです。したがって、マンションの賃貸借の媒介であっても、宅地建物取引業者は「抵当権」の登記がなされているのならば、説明する必要があるということです。

以上は、形式的に条文をあてはめた場合の結論です。そして、これが実質的にも妥当だというのは、民法を勉強された方ならば十分に理解できるはずです。

抵当権が設定された不動産を賃借した人は、抵当権が実行された場合、自己の賃借権が否定されてしまいます。つまり、追い出されるわけです。つまり、抵当権と賃借権の優劣は、先に対抗要件を備えた方が優先するわけです。したがって、先に抵当権の登記がなされているときには、賃借人に重要事項として説明してもらわなければいけないわけです。

*宅地建物取引業法35条1項1号

2 違反しない。代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的を説明しなければならないが、その保管方法についてまで説明が要求されているわけではない。
*宅地建物取引業法35条1項6号

3 違反しない。当該建物の所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額については、区分所有建物の売買の場合には説明が必要であるが、貸借の場合には説明は不要である。
*宅地建物取引業法施行規則16条の2第7号

4 違反する。当該一棟の建物及びその敷地の管理が委託されているときは、その委託を受けている者の氏名及び住所が説明の対象になっている。
*宅地建物取引業法施行規則16条の2第8号


【解法のポイント】問題文に書きましたように、本問は法改正により正解が2つとなっています。過去問の学習は本試験でどの部分が問われているかを知ることが重要だと考え、正解を1つにするため、無理に不自然な訂正はしないことにしました。ご了承をお願いいたします。なお、区分所有建物(マンション)に関する重要事項の説明の問題は意外によく出題されます。あまり、特殊な問題だと思わないで、しっかり学習しておく必要があります。区分所有建物に関する重要事項の説明で、勘違いしないで欲しいことは、区分所有建物も建物である以上、普通の建物としての重要事項の説明も必要です。われわれが区分所有建物の重要事項説明として勉強する内容は、通常の建物の重要事項説明の内容にプラスして、区分所有建物の重要事項説明が必要だということです。