下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成10年 問15

【問 15】 不動産の仮登記に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 仮登記は、登記の申請に必要な手続上の条件が具備しない場合に限り、仮登記権利者が単独で申請することができる。

2 仮登記の申請に仮登記義務者が協力しない場合には、仮登記権利者は、仮登記手続を求める訴えを提起し、勝訴判決を得たときでなければ、単独で仮登記の申請をすることができない。

3 抵当権設定の仮登記に基づき本登記を申請する場合に、その本登記について登記上利害関係を有する第三者があるときは、申請情報と併せて抵当権者の承諾を証する当該抵当権者が作成した情報を提供しなければ、当該本登記を申請することができない。

4 仮登記の抹消は、申請情報と併せて仮登記の登記名義人の承諾を証する当該登記名義人が作成した情報を提供した場合には、仮登記義務者が単独で申請することができる。

【解答及び解説】

【問 15】 正解 4

1 誤り。仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき及び仮登記を命ずる処分があるときは、当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができるが、これは登記の申請に必要な手続上の条件が具備しない場合(1号仮登記)だけでなく、実体法上の要件が完備しない場合(2号仮登記)でも同様である。
*不動産登記法105条

2 誤り。仮登記は、仮登記手続を認める勝訴判決を得たときだけではなく、仮登記を命ずる処分があるときにも、仮登記の登記権利者が単独で申請することができる。
*不動産登記法107条

3 誤り。所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、申請情報と併せて抵当権者の承諾を証する情報を提供しなければ、当該本登記を申請することができない。しかし、所有権以外の仮登記に基づく本登記については、利害関係者の承諾を証する当該利害関係者が作成した情報の提供は不要である。

【じっくり解説】

本問に関する条文は、不動産登記法の109条です。ちなみに、最近の不動産登記法の問題の傾向は、条文の言葉をそのまま問題文にしていることが多いので、ちゃんと読んで下さい。

第109条 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
2 登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、同項の第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない。

たとえば、A→B売買予約でBが仮登記した後、A→C売買契約でCが本登記をしたという事例で考えましょう。先ほどの条文で「登記上の利害関係を有する第三者」というのは、上の例でいうと、Cのことです。したがって、Bが仮登記から本登記をするには、Cの承諾が必要だという意味です。

そして、Bの仮登記から本登記への申請があれば、登記官は、職権で、第三者(C)の権利に関する登記を抹消しなければならないとされています(第2項)。

このように所有権に関する仮登記に登記官の職権による抹消という手続を要求したのは、所有権というのは最も基本となる重要な権利だから、登記記録上、Bの登記と両立しないCの登記を残したまま、Bの登記をするというのは混乱する可能性があるからです。そこで、Cの承諾+登記官によるCの登記の抹消という手続を設けたわけです。

ただ、注意してほしいのは、Bの仮登記が「所有権」ではなく、抵当権のような「所有権以外の権利」の仮登記であった場合です。この場合は、利害関係を有する第三者の承諾は不要で、Cの登記抹消もしないということです。109条も「所有権に関する仮登記に基づく本登記」という表現になっています。

たとえば、A→B抵当権設定仮登記、その後A→C売買契約でCの所有権移転本登記という場合ですが、仮にBの抵当権設定仮登記が本登記になったとしても、Cの所有権が奪われるわけではありません。したがって、Cの登記を抹消することはできないはずです。この場合、Bの抵当権の仮登記には順位保全効があるわけですから、BはCの所有する不動産に抵当権を有しているということになります。

Bの仮登記が所有権である場合は、Bの所有権とCの所有権は両立しないので、Cの所有権の登記を外して抹消しないといけませんので、そのためCの承諾が必要です。ところが、Cの所有権とBの抵当権は両立しますので、Cの承諾がなくても、Bは抵当権をCに対抗できるとすればそれでいいわけです。以上より、本問は「誤り」ということになります。

*不動産登記法109条1項

4 正しい。仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人の承諾を証する当該登記名義人が作成した情報を提供して、仮登記の登記上の利害関係人(登記義務者を含む)が単独で申請することができる。
*不動産登記法110条、不動産登記令別表70項ロ


【解法のポイント】仮登記に関するかなり難しい問題だと思いますが、正解肢である肢4は、再度この部分を膨らませて出題されています。