下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成21年 問38

【問 38】 宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者でない買主Bとの間で締結した売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)及び民法の規定によれば、誤っているものの組合せはどれか。

ア AがBとの間で締結した中古住宅の売買契約において、当該住宅を現状有姿で引き渡すとする特約と、Aが担保責任を負わないこととする特約とを定めた場合、その特約はいずれも有効である。

イ Aは、Bとの間で建物の売買契約を締結する前に、法第35条の規定に基づく重要事項として当該建物の瑕疵の存在について説明し、売買契約においてAは当該瑕疵について担保責任を負わないとする特約を定めた場合、その特約は有効である。

ウ AがBとの間で締結した建物の売買契約において、Aは瑕疵担保責任を一切負わないとする特約を定めた場合、この特約は無効となり、Aは担保責任を一切負わないとする特約を定めた場合、この特約は無効となり、Bが担保責任を追及するために契約不適合を通知すべき期間は当該建物の引渡しの日から2年間となる。

1 ア、イ
2 ア、ウ
3 イ、ウ
4 ア、イ、ウ
【解答及び解説】

【問 38】 正解 2

ア 誤り。宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、担保責任に関し、担保責任を負う期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。したがって、Aが一切担保責任を負わないとする特約は無効である。これは現状有姿で引き渡すという特約があっても同様である。
*宅地建物取引業法40条

イ 正しい。民法では、悪意の買主が瑕疵担保責任を追及することは認められていない。本肢では、買主は瑕疵の存在について、重要事項として説明を受けており、当該瑕疵については悪意と認められる。したがって、当該瑕疵についてAが担保責任を負わないとする特約も、民法より買主に不利なものとはいえず、本肢特約も有効である。

【補充解説】本問は、原文のまま出題しています。令和2年の民法改正で、悪意の買主でも担保責任(契約不適合責任)を追及することができるようになりました。したがって、瑕疵について重要事項として説明していることにより、買主が悪意であったとしても、買主は担保責任を追及することができるので、担保責任を負わないとする特約は無効であると考えることもできます。しかし、そもそも担保責任は、目的物が種類又は品質に関して「契約の内容」に適合しない場合に認められるものです。したがって、目的物の瑕疵について説明することによって、そもそも売買契約の目的物は、当初からそのような品質のものであるということになり、当該瑕疵の存在があったとしても「契約」に適合していると考えることもできます。この点について、難しい判断だと思いますが、そのまま当該特約は「有効」と一応考えておきます(私見)。
*宅地建物取引業法40条

ウ 誤り。宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、買主が担保責任を追及するために契約不適合を通知すべき期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。したがって、Aが一切担保責任を負わないとする特約は無効となり、この場合のBが担保責任を追及するために契約不適合を通知すべき期間は、民法の原則に戻り、契約不適合を発見してから1年となる。
*宅地建物取引業法40条

以上より、肢ア及び肢ウが「誤り」となり、正解肢は肢2となる。


【解法のポイント】この問題は、肢イをめぐって、試験直後には正解番号に争いが出た問題ですが、解説にある通りで、正解が肢2で特に問題はないと思います。