下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成27年 問7

【動画解説】法律 辻説法

【問 7】 債務者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額2,000万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額2,400万円)、債権者Dが三番抵当権(債権額4,000万円)をそれぞれ有しており、Aにはその他に担保権を有しない債権者E(債権額2,000万円)がいる。甲土地の競売に基づく売却代金5,400万円を配当する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 BがEの利益のため、抵当権を譲渡した場合、Bの受ける配当は0円である。

2 BがDの利益のため、抵当権の順位を譲渡した場合、Bの受ける配当は800万円である。

3 BがEの利益のため、抵当権を放棄した場合、Bの受ける配当は1,000万円である。

4 BがDの利益のため、抵当権の順位を放棄した場合、Bの受ける配当は1,000万円である。

【解答及び解説】

【問 7】 正解 2

1 正しい。BがEの利益のために抵当権を譲渡すると、EはBの債権額2,000万円の範囲で一番抵当権者となり、Bは無担保債権者となる。したがって、Bの受ける配当は0円となる。
*民法376条1項

2 誤り。BがDの利益のため、抵当権の順位を譲渡すると、DはBの債権額2,000万円の範囲で一番抵当権者となり、三番抵当権者に対する配当である1,000万円についてはDが受けることができ、Bの配当額は0円である。
*民法376条1項

3 正しい。BがEの利益のため、抵当権を放棄した場合、Bの2,000万円の一番抵当権は、BとEが同順位となり、2,000万円をBとEの債権額に応じて按分して配当を受けることができる。したがって、BとEは両方とも債権額は2,000万円なので、一番抵当権の2,000万円の配当を平等に分けることになり、Bの受ける配当は1,000万円となる。
*民法376条1項

4 正しい。BがDの利益のため、抵当権の順位を放棄した場合、BとDは同順位となり、一番抵当権の配当額2,000万円と、三番抵当権の配当額1,000万円の合計額の3,000万円をBとDの債権額で按分し(B:D=2,000万円:4,000万円=1:2)、Bは3,000万円×1/3=1,000万円の配当を受けることができる。
*民法376条1項


【解法のポイント】抵当権の譲渡・放棄、抵当権の順位の譲渡・放棄について、今までは抽象的にしか出題されていなかったと思いますが、具体的な配当額について問われたのは初めてだと思います。今年は、間違えても仕方がないかと思いますが、この問題は今後も出題されると思います。「抵当権の譲渡・放棄」と「抵当権の順位の譲渡・放棄」の違いは、譲渡・放棄を受ける者が無担保債権者のときは「抵当権の譲渡・放棄」、後順位抵当権のときは「抵当権の順位の譲渡・放棄」です。譲渡と放棄の違いは、譲渡は完全に入れ替わること、放棄は、同順位となることです。