下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 平成30年 問5

【動画解説】法律 辻説法

【問 5】 Aは、隣人Bの留守中に台風が接近して、屋根の一部が壊れていたB宅に甚大な被害が生じる差し迫ったおそれがあったため、Bからの依頼なくB宅の屋根を修理した。この場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 Aは、Bに対して、特段の事情がない限り、B宅の屋根を修理したことについて報酬を請求することができない。

2 Aは、Bからの請求があったときには、いつでも、本件事務処理の状況をBに報告しなければならない。

3 Aは、B宅の屋根を善良な管理者の注意をもって修理しなければならない。

4 AによるB宅の屋根の修理が、Bの意思に反することなく行われた場合、AはBに対し、Aが支出した有益な費用全額の償還を請求することができる。

【解答及び解説】

【問 5】 正解 3

1 正しい。法律上の義務がないのに、他人のために事務の管理を始めることを事務管理というが、この事務管理については、報酬に関する規定はなく、Aは報酬を請求することはできないと解されている。
*民法702条参照

2 正しい。事務管理においては、委任に関する「受任者による報告」の規定(民法645条)が準用されており、管理者(本問においてAのこと)は、本人の請求があるときは、いつでも事務処理の状況を報告しなければならない。
*民法701条

3 誤り。管理者(A)は、事務管理において、一般的には善管注意義務を負うが、管理者が、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは(緊急事務管理という。)、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わず、善管注意義務はない。本問は台風の接近によりB宅という財産に対する急迫の危害が生じている場合であるから、Aは善管注意義務はない。
*民法698条

4 正しい。管理者(A)は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。なお、管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、その償還を請求することができるが、本肢では、本人(B)の意思に反していないので、有益な費用「全額」の償還を請求することができる。
*民法702条1項



【解法のポイント】この問題は、ほとんどの受験生はビックリしたでしょう。そもそも何の問題かすら分からなかった人もいると思います。宅建試験においては、このような問題も出題されることがありますが、合否には影響しない問題だと思います。