下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和2年 問4

【動画解説】 宅建 辻説法

【問 4】 建物の賃貸借契約が期間満了により終了した場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、賃貸借契約は、令和2年7月1日付けで締結され、原状回復義務について特段の合意はないものとする。

1 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合、通常の使用及び収益によって生じた損耗も含めてその損傷を原状に復する義務を負う。

2 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合、賃借人の帰責事由の有無にかかわらず、その損傷を原状に復する義務を負う。

3 賃借人から敷金の返還請求を受けた賃貸人は、賃貸物の返還を受けるまでは、これを拒むことができる。

4 賃借人は、未払賃料債務がある場合、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てるよう請求することができる。

【解答及び解説】

【問 4】 正解 3

1 誤り。賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負うが、この原状回復の範囲には、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」は除かれている。
*民法621条

2 誤り。賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
*民法621条

3 正しい。賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、「賃貸物の返還を受けた」ときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。したがって、賃貸人は、賃貸物の返還を受けるまでは、敷金の返還を拒むことができる。
*民法622条の2第1項1号

4 誤り。賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないとき(未払賃料債務)において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
*民法622条の2第2項



【解法のポイント】本問は、令和2年の法改正で新設された「賃借人の原状回復義務」と「敷金」の規定に焦点を絞った内容です。ただ、この法改正は従来からの判例等を明文化したものなので、違和感なく解答できたと思います。