下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

宅建 過去問解説 令和7年 問1

【動画解説】法律 辻説法

【問 1】 所有者AがBに甲土地を売却し、その後にBがCに甲土地を売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、この問において、Cは背信的悪意者ではないものとする。

1 甲土地の所有権登記がAの名義のままであったとしても、Bは、Cに甲土地を売却した後は、Aに対して自己に甲土地の所有権移転登記をするよう請求することはできない。

2 Cは、甲土地の所有権移転登記を備えなければ、Aに対して自己が所有者であることを主張することができない。

3 AB間の売買契約が、BC間の売買契約締結よりも前にAにより解除されていた場合、又は、BC間の売買契約締結後にAにより解除された場合のいずれの場合であっても、Cは、甲土地の所有権移転登記を備えれば、Aに対して自己の所有権を主張することができる。

4 AB間の売買契約が、BC間の売買契約よりも前にBの強迫を理由として取り消されていた場合、又は、BC間の売買契約締結後にBの強迫を理由として取り消された場合のいずれの場合であっても、Cは、Bの強迫につき善意でかつ過失がなければ、Aに対して自己の所有権を主張することができる。

【解答及び解説】

【問 1】 正解 3

1 誤り。売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う。したがって、AB間、BC間でそれぞれ売買契約が成立している以上、BはAに対して、CはBに対して自己に所有権移転登記をするよう請求することができる。これは、BC間で売買契約が成立した後でも同様である。
*民法560条

2 誤り。売買契約の買主は、前主である売主に対して登記なく、自己の所有権を主張することができるだけでなく、前々主に対しても登記なく自己の所有権を主張することができる。
*民法177条

3 正しい。契約の解除「前」の第三者は、自己の権利の保護要件として登記を備えることが必要である。また、Aと契約の解除「後」の第三者の関係は、二重譲渡類似の関係となり、第三者は登記を備えれば自己の所有権を主張することができる。
*民法177条、545条1項

4 誤り。強迫による取消前の第三者は、善意無過失でも保護されないが、Aと強迫による取消後の第三者との関係は、二重譲渡類似の関係となり、登記を備えていれば、悪意であっても第三者は保護されるので、善意無過失であれば、当然保護される。
*民法96条3項反対解釈、177条


【解法のポイント】この問題は、基本的な問題だと思います。権利関係の問題としては、無難にスタートできたのではないかと思います。