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第457条(主たる債務者について生じた事由の効力)


【改正法】
(主たる債務者について生じた事由の効力)
第457条 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。

2 保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。

3(新設)主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
【旧法】
(主たる債務者について生じた事由の効力)
第457条 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。

2 保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。

※上記赤字の部分が改正部分です。

【解説】

1.時効の完成猶予及び更新(第1項)

本条は主たる債務者について生じた事由の効力は、保証人にもその効力が生じるという保証債務の付従性について規定された条文です。

第1項は、主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対して効力を生じる旨が規定されていますが、この規定は改正されていません。時効の「中断」が、時効の「完成猶予及び更新」というふうに変更されていますが、これは今回の改正で時効の中断事由を整理し、従来時効の中断事由とされていたものを時効の完成猶予事由と時効の更新事由に分けたため、このように文言の変更がなされただけです。詳細な解説は、第147条(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)をご覧下さい。

2.主債務者の有する抗弁(第2項)

旧法の第2項は、主たる債務者が債権者に対して反対債権を有する場合の相殺について規定されていましたが、この相殺権については、若干の手直しの上、改正法第3項に移行していますので、次の第3項の解説を見て下さい。

そして、この相殺権以外の抗弁については解釈に委ねられていました。この点について、保証債務はあくまで主債務の履行を担保するためのものなので、主たる債務者が有する抗弁については、保証人がその抗弁を援用することができると一般的に解釈されていました。

そこで、改正法は、相殺権に限らず、主たる債務者が有するその他の抗弁についても、保証人はその抗弁をもって債権者に対抗することができる旨の規定を新設しました。

3.主債務者の有する相殺権等(第3項)

本項は、旧法第2項で規定されていた主たる債務者が有する相殺権について規定しています。旧法の規定によれば、保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができるとしていますが、この意味は、保証人が主たる債務者の有する債権を用いて相殺の意思表示ができるとする考え方もありました。

しかし、保証人に、他人である主たる債務者の債権の処分権限を与えるのは過大であるとして、あくまで保証人は相殺によって主たる債務が消滅する限度で「履行を拒絶」できるだけだと解されていました。

そこで、改正法では、「権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる」と規定し、「履行の拒絶」という形に明文化しています。

次に、主たる債務者が取消権又は解除権を有する場合については、規定がありませんでしたが、取消権又は解除権が行使されることが確定されるまでは、保証人は保証債務の履行を拒絶することができると解されていました。そこで、主たる債務者が相殺権だけでなく取消権又は解除権を有している場合についても、保証人に履行の拒絶権を認めました。